2026/02/06 10:19

あなたにも、そんな経験はないだろうか
透明ブックカバーなどのフィルム製品を作っている工場で技術者として働いていた私は、生産現場で本のサイズや厚みに合わせて機械を止め、調整を繰り返す日々を目を当たりにしていた。その時ふと思った。「どんな厚みにも対応し、誰にでも簡単に装着できるブックカバーを作れないだろうか」と
常識を疑うことから始まった
従来のブックカバーの概念を疑い、今までとは違うモノを作ろうと考えた
「なぜ、ブックカバーは一つの構造なのだろう?二つの構造でもいいのではないか」
その後退社し、世界を旅すること数年… 滞在先のバンコクの街を歩いていた時、とあるヒントに出逢った「これは、あのブックカバーに応用できるのではないか」 閃きは、突然やってきた

帰国後、この構造で特許を申請し、その年のISOTという展示会に出展する機会に恵まれた。和紙と布貼り紙で作った試作品を参考出品として展示した。まずはお客様の声や反応を聞きたかった
想像以上の反響があった。雑誌、Webマガジン、業界新聞などに取り上げていただき、多くの方から「いつ発売するのですか?」と聞かれた
しかし、私自身、このまま商品化することに納得がいかなかった
展示会で出逢った読書家の方々から、あるリアルな声を聞いたからだ。 「何度も使うと汚れるので、洗いたい」
その言葉が胸に刺さった。 本を愛する人たちは、ブックカバーも大切に、長く使いたいのだ
『服のように洗えるブックカバーを作ろう』
そう決めた瞬間、honnohukuへの開発が始まった。 しかし、この決断がここまでの苦労と時間を要するとは、この時はまだ知る由もなかった
誰もやったことのない挑戦
縫製や生地について右も左も分からない私は、幾つもの縫製工場に相談した。しかし、業界には無かった特殊な構造もあり、「やれなくはないが…」「うちはちょっと…」「ブックカバーは…」という対応ばかり
それならば自分たちでやってみようと、クラフト作家さんの協力を得て、パターンから縫製、試作まで挑戦した。様々な服飾の芯材を試し、洗濯テストを繰り返す。納得いかなければ、材料やパターンを変更し、また作り直す。そしてまた洗う。その繰り返しだった。
目指したのは、この3つの要素の両立だった
① どんな厚みにもぴったりフィットして、読み心地が気持ちいいこと
② スライド部がスムーズに動き、簡単に厚さ調整ができることそして滑りすぎず、抜けないこと
③ 洗っても①②の感覚と機能が復元し、持続すること
読書の時間を、何よりも大切にしたかった

ベルリンの小さな店で見つけた答え
うまくいかず、八方塞がりになっていた
そんな中、とある用事で訪れたベルリンの街を歩いていると、ふと目に止まった個人の文具雑貨店に引き寄せられるように入っていた
そこには優しい笑顔で迎えてくれた若い店主がいた。 彼が紹介してくれた商品の中に、ヒントになりそうなものがあった。
『濡れても形が崩れず、乾いたら元の形に戻る紙』
その瞬間、「ブックカバーの芯は、このような紙で考えてもいいのではないか?」と思った。 最初に試作したサンプルも紙で作っていた。原点に戻ってもいいのではないか
運命の素材との出逢い
帰国後、紙を取り扱っている会社で求めている素材を相談した時、担当者の方が特殊な素材を提案してくださった
見て、触れた瞬間——「これだ!」
それから複数の素材で芯材を試作し、テストを重ねた。 そして最も良い結果が出たのは、やはりこの最初に出逢った、ピンときたこの素材だった
洗っても柔らかくなりすぎず、程よい硬さをキープする。 使えば使うほど手に馴染み、大事な読み心地も決して失わない
「これなら、読書家の方々に気に入ってもらえる」
そう確信した
世界を旅して出逢ったヒントがギュッと詰まって誕生したのが、ブックカバーのhonnohukuです
本を愛するすべての人へ
つづく
